君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



「…なんか今日、いやに機嫌よくない?」


芽依がわたしの顔を覗き込む。


「普通だよ。」
「…彼氏できた?」
「そんな訳ないじゃん!」
「怪しい…」


…彼氏、じゃない。
彼はわたしのお兄ちゃんだし。
ただ、お互いの気持ちがわかったと言うか…


「よくわからない…」
「え?」
「んーん、何でもない。」


学祭が終わると大嫌いな中間テストがやってくる。
そしてそれが終わると夏休み。
お兄ちゃんがいるから、今年の夏休みは少し楽しくなるといいな。


「芽依は夏休み何か予定ある?」
「ねえ、翔太さんって彼女とかいるのかな?」


ビリビリと紙を破る手を止めて、芽依を見る。
思わぬ質問に驚きを隠せないわたし。


「え、芽依って…」
「好きなんだよね…翔太さん。」
「…え、え、どこが?どのへんが?」
「あの無邪気な笑顔とか…なんか裏表無さそうじゃん?」


確かに、わたしも同じこと思ったことあるけど…。
恋する乙女の目になっている、芽依。

…驚いた。芽依はお兄ちゃんみたいな人がタイプだと思ってた。
翔太くんの方とは…。

翔太くんについて探るにはお兄ちゃんに聞くしかない。
わたしたちは、聞き込み調査を始めることにした。