君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



***




目を覚ますとお兄ちゃんの部屋に居た。
時計を見ると朝の七時で慌てて飛び起きる。
隣で寝ていたお兄ちゃんは既に起きているようで、もういない。
窓から太陽の日差しが差し込んでいるから、嵐は去ってしまったようだ。
昨日の夜の出来事を思い出して、布団に顔をうずめる。


「や…やばい、…」


お兄ちゃんの匂い。優しい声。
抱き締められた時の、体温。
幸せすぎておかしくなりそうだ。


「…遅刻するよ?」
「わっ…!」


顔を上げると、いつの間に戻ってきたのかお兄ちゃんが立っていた。


「…ごっ、ごめん…っ」


慌てるわたしを見て、お兄ちゃんが笑う。
部屋を出ようとすると、腕を引かれて抱き締められる。


「…な、なに?」
「いや別に、…昨日のは嘘じゃないのかなって」


確認?、とお兄ちゃんが笑う。
そんなお兄ちゃんを見てわたしも笑ってしまう。
やっと離してくれたお兄ちゃんを見送り、
わたしも急いで学校へ行く支度を始めるのだった。
学校にギリギリ間に合って、学祭の片付けが始まる。