君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



「…お兄ちゃん、」
「ん、?」
「今日、愛姫さんとキスしてた。」


…見てたのか。
凛兎はなぜかもう一度泣きそうだ。


「愛姫とは終わったんだけど、…あいつ納得してくれなくて。」
「…なんで?」

「…俺のせい、かな。」


結果的に俺が、愛姫の気持ちを弄んだようなもんなんだよな。
不安そうに俺を見つめる凛兎の髪を撫でる。


「…でもちゃんと区切りつけるから。」


俺がちゃんとしないと、二人とも傷つけてしまう。
…何とかしないと。
時計を見ると午前零時を既にまわっていた。


「…ごめん、明日学校だよな。」
「…大丈夫、」
「いや、…今日疲れたから眠いだろ。」


そう言われて思い出したように目を擦る凛兎。
それが可愛くて、凛兎の頰に触れてゆっくり唇を重ねた。