君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



離れた時にわかった。
あの頃はまだ俺、中学生だったけど。
いや、中学生だったからこそつらかった。
何もできない自分に腹が立った。

だから今、凛兎が目の前にいるから。
もう離したくない。今度こそ俺が守りたい。



「…ありがと。」

凛兎が俺の服の裾を掴む。
凛兎の匂いに、子供の頃の記憶が蘇る。





『凛兎はね、おおきくなったら、およめさんになるの』
『…だれの?』
『……ないしょ』
『おれじゃないのかよ!』
『ふふ、……りおんくんかもね』




小さい時から変に大人で、色気放ってて、俺、それにやられたのかも。
でもそのくせ泣き虫で、危なっかしくて、目が離せなくて。
笑ったときの顔が誰よりも何よりも可愛くて。


凛兎の肩を少し押して、体を離す。
まだ少し涙で濡れている頰に唇で触れると、凛兎は涙目で俺を見上げた。