「…お茶とか入れた方がいいのかな。」
愛姫さんに、気が利かない妹だと思われるだろうか。
…元カノ、さん。
あんなに綺麗な人、勝てる気がまったくしない。
部屋を出ると、隣のお兄ちゃんの部屋のドアが少し開いている。
…ゆ、誘惑だ。
でも気になって隣の部屋の前まで音を立てないように歩く。
「凛音ってこんなに漫画好きだったの?」
「…お前さあ、」
突然、愛姫さんの目がドアの隙間からわたしを捉えた。
…や、やばいかな。
愛姫さんは楽しそうに少し口角を上げた。
「凛音、…」
「…なん、」
愛姫さんが、お兄ちゃんにキスをする。
…ああ、ほら、やっぱり。
…わたしじゃ、勝てない。
…泣くな、わたし。
見ていられなくてその場を後にすると、
わたしは静かに家を出た。