「ほらほら、凛兎も着替えた着替えた!」


着替え室に押し込まれ、渡された服を広げる。


「芽依ー!どういうこと!わたし地味なのでいいって言ったのに!」
「わたしの可愛い凛兎に地味な服なんて着せられますかい。」


ドアの向こうにいる芽依に文句をぶつける。
やられた。渡された衣装はあの可愛い鬼娘をリメイクしたものらしく、
豹柄のトップスに豹柄のミニスカート。豹柄のもこもこニーハイタイツ。
頭には鬼耳。結構…いや、かなり恥ずかしい。


「こんな派手なの…想定外なんですけど。」
「凛兎ー、始まっちゃうよー、メイクもあるんだからはーやーくー!」


芽依の催促にしぶしぶ服に手を通す。
…絶対にお兄ちゃんと翔太くんに会いたくない。
制服を畳んでバッグに入れると、わたしは着替え室を後にした。


「いーい?凛兎は可愛いんだからね?」


楽しそうにわたしにメイクをしながら芽依が何度も同じことを言う。
メイクなんてしたことないのに、いきなり緑色のアイシャドウって。
芽依が持ってるメイク道具をみて、心配になってきた。


「…それ何のおまじない?」
「凛兎が自信持てるよーに…っと、できた!」


鏡を見ると、そこに写っているのはもちろん、いつものわたしではなかった。
…これなら中学の人がいてもバレないかも。


「どんなもんよ!」
「芽依ってすごいね、」


照れる、なんてふざける芽依。
二人で笑ってしまう。
学祭開始のアナウンスが流れて、外がガヤガヤと賑わい始める。



「行くよ、凛兎。」
「うん」


芽依に手を引かれ、教室に向かった。

しかし…会いたくない人には、
早々に会ってしまうもので。