君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



それから二人で帰り道を歩く。
ちらりと見上げるお兄ちゃんは、やっぱりかっこいい。
わたしの視線に気づいてこちらを向くもんだから、また慌てて視線をそらす。



「芽依ちゃんって、凛兎の親友?」
「うん、まあ、…そんな感じ。」
「可愛い子だね。」


お兄ちゃんの何気ない一言が、
少し胸に刺さる。
うん、芽依は誰が見ても本当に可愛い。
…わたしと違って。


「…好きになっちゃダメだからね。」


気付いたらそんなことを言っていた。
…え、恋愛なんて人の自由じゃん。
…なんでわたしそんなこと。


「なんで?」


少し笑いながらそう聞くお兄ちゃん。


「…めっ、芽依と姉妹になんてなりたくないから!
芽依は親友だけど、家族は、どうなんだろう…っ?」

「いきなり結婚かよ。」



慌てて苦しい言い訳をすると、お兄ちゃんが笑い出す。
つられてわたしも笑ってしまう。


「凛兎って面白いよなあ。」


笑いながら歩く、帰り道。
何だかんだ兄弟がいるっていいことなのかな、と思った。