君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



「よ、凛兎。」
「…なんで?」
「大学早く終わったから寄ってみた。」

「…え、凛兎って彼氏いたのっ⁈」


芽依の慌てぶりがおかしいのか、お兄ちゃんが笑う。


「はは、じゃあそう言うことにしといて。」
「ちょ、何言ってんの!芽依、これはわたしのお兄ちゃん!」
「お兄ちゃん⁈あの噂の幽霊兄貴⁈」


幽霊兄貴は失礼だ。


「どうも。凛兎の兄の凛音です、凛兎がいつもお世話になって…」
「こっこちらこそ!凛兎がいつもお世話になって…」


…なんの会話をしてるの。
とりあえずお兄ちゃんは幽霊兄貴を華麗にスルーした。
ペコペコと頭を下げる芽依を見て、お兄ちゃんはまた笑い出す。


「じゃ凛兎、帰ろっか。芽依ちゃんも一緒に帰る?」
「あー…、わたしはこれからバイトなので。」
「どこでバイトしてるの?」
「駅前のレストランです。」
「あー、あそこか!じゃあ今度凛兎と一緒に行くね。」
「えー!ぜひぜひ!」


頑張ってね、とお兄ちゃん。
お兄ちゃんの笑顔で芽依はノックアウトしたようでした。