君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



着替えを済ませて、わたしの部屋のとなりの部屋に入る。
わたしがお母さんと二人でこの家に引っ越してきたのが
いつだったかは何故か覚えていないけど、
だいぶ長い間この部屋は空き部屋だったことだけ覚えている。
男の人なのに、なんでこんなにたくさんダンボール箱があるんだろう…



「大きいものから始めよっか。」
「あ、うん。」


お兄ちゃんの一言で、一緒にベッドと机の移動を始める。
久しぶりの労働。明日筋肉痛になりそう。

大きいものがひと段落してから、お兄ちゃんは本棚の組み立てを開始した。
することのないわたしは、散乱している段ボール箱を開けてみることにする。



「ねえ、このダンボール開けてもいい?」
「うん、いーよ。」


作業しながら返事をするお兄ちゃん。
許可をもらったのでひとつ開けてみると、
写真立てが出てきた。
写真に写っているのは、優しい表情をした女の人。
どこか、お兄ちゃんに似ている。


「…これ、お兄ちゃんのお母さん?」