君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



「…凛兎の髪って昔から柔らかいよなあ、」
「え?なに?」
「いや、何でもない。」


ドライヤーの音でお兄ちゃんの声が全然聞こえない。
…人に髪の毛を触られるのって、何でこんなに心地いいのかな。
こんな経験無いはずなのに、すごく懐かしい気持ちになる。


「…はい、終わり。」
「……ありがと、」



お兄ちゃんがパチン、とドライヤーのスイッチを切り、
大きな手でわたしの頭をぽんぽんと撫でる。


「おやすみ、凛兎。」


お兄ちゃんの笑顔はずるい。
急に目が覚めた。
多分今、わたしの顔は真っ赤だ。
逃げるように二階に上がって、部屋の戸を閉める。


「…なに、今の。」


この家にいたら、
心臓がもたないかも知れない。
布団を頭から被って、目を閉じた。