君を知らないわたしと、わたしを知っている君。



「…わかったよ。凛兎には負けた。」
「…ほんと?会いに行く?」
「…うん。お前、俺が知らないうちに強くなってたんだな。」


凛音くんがわたしの頭にぽん、と手を乗せる。



「…なあ、キスしていい?」



凛音くんが優しく微笑う。
わたしは、返事の代わりに目を閉じた。
夕日に照らされて、ゆっくりと影が重なる。
初めての時みたいな、懐かしいキスだった。




今まで、夕日はわたしにとって悲しい思い出だけだった。
だけど、凛音くんがそれを変えてくれた。
人って、一人ではなかなか生きていくことが難しいけど、
周りに大好きな人がいれば、生きるのは素敵なことだと思える。


それでもやっぱり毎日沢山の人が亡くなって、
毎日沢山の人が生まれて、地球は廻り続けている。



——世界って、残酷かな。
———いや、この世界は思っていたよりもずっと美しいよ。







幸せになる権利がない人なんて、
きっといないんだ。