お兄ちゃんの声が段々と涙交じりになる。
…そりゃそうだ。
…ずっと、嘘つかれてたなんて、
辛いに決まってる。
「…死んだと思ってた、しかも一度も会ったことない母親に
今更どんな顔で会いに行けって言うんだよ…」
お兄ちゃんの肩が震える。
…泣いてるところ、初めて見た。
いつもわたしが泣いてばっかりだったから。
だからこう言う時、どうしたらいいのかわからない。
「…大丈夫だよ。会いに行けば、お母さん喜んでくれるよ。」
「……何も知らねーくせに。」
「え、…」
お兄ちゃんがベッドから起き上がる。
「何も知らねーくせに、簡単に会いに行けとか言うんじゃねーよ!」
突然怒鳴られてわたしは、目を見開く。
お兄ちゃんはそのまま部屋から出て行ってしまった。
少し遅れてから涙が溢れ出す。
…喧嘩なんて、初めてした。
あんな怖いお兄ちゃんは、初めて。
励まそうと思って言った言葉は、逆効果だったみたいだ。
「…ごめんなさい、っ」
誰もいない部屋にわたしの声が響いた。