「凛兎、それいらないの?」
「ん?」
「じゃ、もーらい。」
我に返った頃にはわたしのお皿から、
からあげが消えていた。
「食べ盛りなのね。」
「いや、俺もう二十歳なんだけど。…母さんのからあげがうますぎるの。」
「…なんだか照れちゃうなー!」
…それはそうと、何でこの二人はこんなに自然に家族の会話ができるんだろう。
お兄ちゃんはわたしのこと凛兎、ってすごく自然に呼ぶし。
お母さんは昔のお兄ちゃんを知っているみたいだし。
なんだかわたしだけ置いてきぼりだ。
不思議な気持ちでご飯を食べていると、お母さんの携帯が鳴った。
業務連絡かな。お兄ちゃんをチラ見すると、優しい目がこちらを見ていて慌てて目をそらす。
「凛兎、凛音くん、ごめん!これから出勤になった!」
「大丈夫っすよ、行ってらっしゃい。」
今の電話はそういう連絡か。
せっかく休み取ったのにー、なんてバタバタと支度を始めるお母さん。
そして嵐のように家を飛び出して行った。
