沈丁花

もう、歌を聞くこともなかろう。
隣にいないのだから。

もしあの人が歌ってくれるのならば、隣で華麗に舞って観せよう。

目を閉じると、昨日の様に思い出すことが出来る。

街の通りを、二人で駆けた。
その度に裳の裾を踏んづけて転げる櫞葉を、彼は笑った。そして、手を差し伸べてくれた。

彼の名前は胸に刻み込んだ。
呼ぶこともままなならず、呼ぶ日は永遠と来ないかもしれないと。

あまりに泣きすぎて、侍女が心配していた。本当に空気が悪い。

「私は気分がよろしゅうないので、宮に帰ります。」