女とは思われたくない。
それを言ってしまったら、嘘になってしまう。

だが、これしか、人生経験の少ない櫞葉には、方法が分からなかった。


用を済まして、少し二人で喋った。時間は、すぐに過ぎていく。

時刻は、迫っていた。

「私は、そろそろ帰らねばならないようだ。」

櫞葉は口惜しそうに、青年に告げた。
青年は愛想笑いを浮かべるだけだった。

(そうだ…………)

櫞葉は髪に挿してある彫り模様の美しい簪を引き抜いた。