沈丁花

櫞葉は玲玲として霛塋に仕えていた時期以外は、今もそうだが、少年の様なキッパリとした口調で話す。

娘らしい柔らかな物言いは、後付けしたものだった。

それにも、理由があったのだ。
だが、それを他人に話すこともない、バレてはならない、愚かな感情を。


明くる日、櫞葉は父君の許しを得て、市井にこっそり出かけた。

いつもの襦裙を召すこともなく、地味な村娘ような格好をしていた。

逢いたい人がいる。
それは、逢ってはならなかった。

今となっては、もう逢えない。
乳母子の弟に頼めば、知り合いらしいので、一目見ることは可能だろうが。