沈丁花

「変でしょう?妾、自分の娘には情が生まれなかったの。だって、愛された記憶が、一切、無いのだもの。」

今でも思い出す。

血迷った目をし、紅く染まった少女を。何処か人形みたいで、真青な女を。

そうだったのか。
気づくのが遅かった。
また、それを気がついても、そのままにしておいてしまった。莫迦だ。

彼女が欲しかったのは、財産でも名誉でも身分でもない。

人の愛が欲しかったのだ。
愛されてみたかったのだ。
それに、飢えていたのだ。

「大丈夫だよ。」

そう言うと、酷く安心したのか、泣き出した。