「ええ、そうですね。」

青年は頭を上げない。
それだけの身分差が両者の間に存在するのだ。

「やめよ。お前は、本来ならそこそこのご子息だろ?お前の弟は姉上と婚約してるのだから。」

弟とは、彼の継母の息子だ。
この弟の存在が、彼をここまで落としたのだ。

「私はお前に逢いたくて来たのだ。」

それを口にしてしまった。
どうしても、言いかった。

「お衣裳、あまり似合いませんね。」

青年は笑った。
無礼な台詞だが、妙に落ち着いた。