沈丁花

だったら。
それを、己が許されるのならば、
だったら。
行ってしまおうか。

勝手に脚は動いていた。
振り返ることもしなかった。

ただ、外壁を越えようと、この、愛憎蠱毒、女の世界を抜け出そうと、ただ走る。

久しぶりに走った。
何年ぶりにだろうか。

市井に似合わぬ、公主の豪奢な衣裳は目立って仕方がない。

「-公主様?」

青年はいた。
市井とはいえ、都の一部なので、大規模な宴の雰囲気に肖って、賑やかだった。