沈丁花

そう言って、一人で帰る振りをして、退場した。

また、外に出たかった。
彼の人に逢いたかった。

涙を袖で拭った。
こんな格好で市井に出ては、怪しまれそうだと思った。だからといって、着替える気にもなれなかった。

(!?)

ゆったりと、人の歌声がした。

(誰?)

この辺りには妃の住まう宮殿は無い。そうだが、一人例外があるのを思い出した。

(榮氏か?)