十九年、人生を台無しにした。
青春時代は、あまりにも単調で、何の楽しみもなかった。

幽閉公主。
そう、噂されていたこともある。

「灵鷖様。」

愛しい人は、もう居ない。
名を呼んでくれる人はもう。

月が、美しい。
それを語る人も、居ない。

愛しい人のために、とびきりの衣裳で粧す楽しみも、無くなった。

今宵を限りに、名を捨てる。
灵鷖、基、霛塋(レイエイ)という名を。