「大野さん、どうしたんですか?」 わたしは焦っている様子の大野さんの背中に問いかけた。 「真緒ちゃん~。 実は、財布がないのよ。 紫の長財布なんだけど......って言っても真緒ちゃんが知るわけないわよね」 大野さんは振り返り、わたしに不安げな表情で訴えた。 「そうですね...見てないです。 もしかしたら家に置いてきたのかもしれませんよ...!」 「そうね。 ちょっと家に電話して確認してみるわね」 大野さんはそう言って電話をかけはじめた。