「別れたくありません。わたしだって、翔くんが好きなんです」



わたしは今にも足が震えてしまいそうだったけど、

ぐっと踏ん張って茅さんに告げた。



すると茅さんはまるで逆上したかのように。



「あなたが翔のこと幸せにできるわけないでしょ!?

私のほうが翔のこと知ってるんだから!!

キスしたのも、抱き合ったのもお互いはじめてで。

キス以上のことだってしたんだから...!

翔のお母さんが亡くなったときも、そばにいたのはこの私...!!

私が一番翔を理解してるんだから!!

あなたなんかに捕られて黙って身を引けるわけないでしょう!?」



彼女は今にも泣き出しそうに叫ぶかのようにいい放った。



わたしはそれに圧倒されて、もうこれ以上なにも言えなくて。



通行人はわたしたちを驚いたように見ている。



「翔にとって私は特別なの。

昨日だって、家に泊めてくれたんだから。

これがどういう意味かわかる?

翔にとってはあなたなんて、
わたしが戻ってくるまでの遊びでしかないのよ」



茅さんは最後にそう告げて、

わたしの前から去っていった。



わたしはしばらくその場から動けないでいた。