後ろから、橋本君が話しかけてきた。

「姫は、課長のキラースマイルに反応しないのな。」

”姫”は止めてって言ってるのに、また言っている橋本君。

「だって、営業スマイルでしょ。いちいちキャーキャー言ってられないよ。それに……」

「それに?」

「心から笑っているのか、分からないし。」

「姫は、いつもクールだな。」


みんなみたいに、キャッキャッとしない。

いつでも冷静に、仕事をこなす。

それが私の持ち味。

私は、長い黒髪をなびかせた。


「ここだ。」

取引先に着いて、私達はエレベーターに乗った。

「いいか。相手の前では、いつも笑顔だからな。」

「はい!」

「特に、森。」