太一side


優衣が熱を出した日

陸矢はひどく落ち込んでいた。


「どうした?」

「また優衣ちゃんを傷つけちゃった……」

「今度は何したんだ?」

「知らないお兄さんが優衣ちゃんのことを狙ってたから、助けてあげたんだけど…やり方を間違えちゃったみたい」

「……ずっと思ってたんだけど、陸矢はどうしてそんなに優衣にこだわるの?」

「優衣ちゃんといると、すごく幸せな気持ちになるんだ。昔からずっと。あとは、単純に可愛いからかな?」


まあ、確かに可愛いけど……


「太一は優衣ちゃんのどこが好き?」

「え……!?」

「あれ? 太一も優衣ちゃんのこと好きなんでしょ?」

「お、お前には関係ないだろ」

「もう、照れちゃって〜! 僕は知ってるよ? 太一が優衣ちゃんを狙ってたこと」

「狙ってるとかそんな言い方っ……!」


優衣のことは好きだけど、初めから諦めてるし……

それをわかってて、陸矢は俺をからかってるんだ。


「……でも、太一になら優衣ちゃんを任せられるな」

「は?」

「僕ね、もう少しでアメリカに行くんだ。本当は中学を卒業したらすぐに行く予定だったんだけど、父さんに頼んで少しだけ先延ばししてもらったんだよ」

「なんで?」

「それは太一にも言えない」

「そっか」


どこか遠くを見つめる陸矢の瞳は寂しげで、そこにはいない大切な人を探しているみたいだった。