「ゆーいーちゃん!」

「りっくん!」

「あそぼ?」

「うん! おかあさん、りっくんとこうえんにいってくる!」

「気をつけてね」

「はーい!」


きょうはなにしてあそぶのかな。

りっくんはいっぱい楽しいあそびを知っている。おもしろい話もいっぱいしてくれる。

りっくんと一緒にいるとすごく楽しいし、ふわふわしたきもちになるんだ。


「きょうはなにするの?」

「ここにすわって」

「うん」


公園のベンチに座ると、りっくんもわたしのとなりに座った。


「ゆいちゃん、あのね…」


わたしの手をぎゅっとにぎる りっくんは、いつもよりまじめでおとなに見えた。


「ぼく、ゆいちゃんのことがだいすきなんだ」

「りっくん…」


たくやくんとか、こうくんに「すき」って言われたことがあるけど、それとはちがう!

だって、りっくんの「すき」は“ほんもの”だから。


「わたしも、りっくんがだーいすきっ!」


きっと、ふわふわしたきもちは「だいすき」ってことなんだ。


「この ゆびわ、ゆいちゃんにあげる」

「わあっ! きれい!」


ビーズのゆびわは、キラキラで、とってもきれいだった。


「けっこんするときに、ゆびわをつけてあげるんだって。だから、おとなになるまで、たいせつにしてね?」


りっくんは、わたしの薬指にゆびわをつけてくれた。


「わかった! たいせつにする!」

「“ほんもののゆびわ”は、おとなになったらあげる!」

「ありがとう!」


わたしも、りっくんになにかあげたいなぁ。

あ! そうだ!


「りっくん、め、つぶって?」

「うん」


わたしは、りっくんにそっと顔を近づけた。


「ゆい、ちゃん…」

「えへへ。ひみつ、だよ?」

「……うん」



はじめてのキスは、ふたりだけのひみつ。


けっこんのやくそくも、ひみつのキスも、
ぜんぶうれしかった。


だけど、わたしが小学5年生のとき。

その思い出が全部真っ黒に染まった……