*ショートカット*        
                
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「じゃ、じゃあ、ありがとうございました!失礼します!」


あまりに気まずくて私はそう言って、立ち去ろうとした。


「おい、ちょっと待て」

「え?」

「あんた、それで教室に行くつもりか?」


自分の格好をよく考えてみれば、髪を切られてボサボサだった。これは…恥ずかしい。


「俺で良ければ整える」

「…お願いします」


なんと髪まで整えてくれるそうだ。この人親切すぎて逆に怪しいな。

シャキシャキと恩人さんは私の髪を切りはじめた。


「名前は?」

「………?」

「お前の名前」

「あ、長国きりか…です」

「…敬語はやめてくれ、同じ1年生だろ」

「は、うん。あのっ恩人さんの名前は?」


私がそう言うと、なぜか笑い始めた。なぜだ?


「ふっはははっ、恩人さんか…。俺は相津尋野だ」


「----そら、できたぞ」


そう言われて、持っていた鏡をみるとまるで店に行ったみたいな仕上がりだった。凄い!


「ショートになってしまったが…」

「いや、気に入った。ありがとう、尋野!」


尋野はくしゃりと私の頭を撫でた。大きな手のひらの感触が気持ちよかった。


「またな」

「うん、色々とありがとう。助かった」


そして私達はそれぞれ教室へ向かった。