妄想彼氏

そう。わたしの能力は、「妄想」しただけで男の子を生みだすことができてしまうこと。
生み出された男の子は、必ず誰かの願いがもとになっているためか、「望んだ」女の子を必ず愛してしまう。
まあ、誰が「望んだ」かは、妄想するとき必ずわたしが頭に思い描いているからなのだと思うけれど──。

わたしのこの能力は、発生した当時こそ学校中の大騒ぎになった。
だけど、いまでは「わたしにも彼氏を!」と希望、依頼してくる女生徒が日常的なことになっている。
いまではもう、わたしが教室の後ろで能力を使っていても、物珍しそうに誰かが見ていることもない。
見ていても暇つぶしの見物、といった感じだ。

七海といま生まれたばかりの司くんを見て、わたしははぁ、とちいさくため息をついた。

「いいなぁ……溺愛彼氏」

失恋したばかりの胸が、ズキリと痛む。