「ありがとう...!!すっごくうれしい」


こんな嬉しい誕生日、はじめてかもしれない。


なんか泣きそう...っ。


「じゃあ食べよ食べよっ!」


葵ちゃんが料理をお皿に盛り付けてくれた。


「いただきますっ」


それから3人で料理を食べて、ケーキも食べて、おしゃべりしたりテレビを見たりして、とても楽しい時間を過ごした。


まさかこんなふうに祝ってもらえるとは思わなくて、胸がいっぱいで、最高の誕生日となったーー。


「暁が言ってたとおりの子だねっ」


帰り際、アパートの外でそうつぶやいた葵ちゃんに、見送るわたしは「え?」と聞き返した。


「暁が言ってたの。彩ちゃんは見た目は近寄りがたいけど、ただの人見知りで素直になれないやつだから、って!」


うふふって優しそうに目を細めて言った。


わたしは驚いた。


「暁がそんなこと...」


「今日の誕生日も暁が教えてくれたの。サプライズはあたしが提案したんだけどねっ。彩ちゃん、これから少しずつあたしにも素を見せてね!」


「うん...っよろしくね!」


わたしは笑顔でうなずいた。


「彩ちゃんはクールな顔と笑顔のギャップがやばいよ...」


「?なんていったの?」


よく聞こえなかった。


「ううんっ、

それじゃあまた明日ねっ!」


「うん、ばいばいっ!気を付けてね!」


大きく手を振って、葵ちゃんを見送った。


家に戻ると、暁は料理に使ったフライパンや食べ終わったお皿を洗っていた。


「わ...わたしがやるから暁はお風呂入ったら?」


近づいてそう言うと、


「珍しいこともあるもんだな」


暁はわざとらしく驚いて手をとめた。


「あ...暁。あのさ」


決して暁の顔なんて見れなくて。


「今日は.........ありがとう」


こんなときにもはっきりと素直にお礼が言えなくて。


暁はふっと小さく笑ってわたしの頭をポンとしてから、自分の部屋に入っていった。


暁には口がさけても言えないけど、今日わたしは心の底からうれしくて、暁がいてくれてよかった、なんて思ってしまった。