かああ...と顔が熱くなった。


「そ、そっちで十分でしょ、ばかっ」


頬だけでも精一杯なのに...!


とびっきりの想いを込めたキス。


ねえ、伝わったでしょ...?


「しゃーねえな」


大きな手のひらでわたしの頭を優しく撫でた。


胸の奥がきゅうーっと締め付けられた。


「...じゃあ、練習戻る」


その言葉とともに、手のひらはそっと離れた。


「う、うん。わたしも帰るね...」


なんだか急に、照れ臭くなった。


...夜になったら、またひとつ屋根の下なのに、きっと今...お互い、離れたくない。


......甘酸っぱくて、くすぐったい気持ち。


「...家で待ってる」


お互い避けていた時間を、これからゆっくり埋めようね。


「...あぁ」


暁はそれだけ返事して、わたしに背を向けた。


その大きくて頼もしい背中を数秒見つめてから...わたしもまた、同じく背を向けた。


今から暁の帰りが、待ち遠しいよ。


はやく、ふたりきりになりたいな...。


...そう考えながら...20歩ほど歩いた、そのとき。


「ーーやっぱ、十分じゃねえよ」


その言葉とともに、ぐいっと後ろから腕を引っ張られ、それと同時に、声の主はわたしの唇にキスを落とした。


不意討ちすぎて、目を丸くすることしかできない。


そっと唇が離れると、目の前には悪魔みたいに微笑む暁がいた。