「...え?」


頭を鈍器で殴られたような感覚に陥った。


わたしは聞き間違いかと思った。


「ど...どういうこと?」


今月いっぱいで、この家を出る...?


「そのまんまの意味。7月から別のとこに住む」


「......」


理解したのに......理解できなかった。


頭が真っ白...というより、真っ暗になった。


「な...んで?わたしのことが...そんなに嫌?」


思わずそう口にしてしまった。


だって、そうじゃなかったら、出ていく必要なんてないはずーー


「あぁ。もうお前の顔なんか、見たくねぇんだよ」


迷いもなくそう言い放つ暁に、わたしは鼻の奥がツーンとするのを自覚した。


「で...っ出てくなら出てけば!?ひとりのほうが楽だし!暁のぶんまであれこれやらなくて済むと思うとせいせいする...!!」


わたしは涙がこぼれ落ちる前に口が動くままに言葉を並べて、部屋に駆け込んだ。


「暁のばか.........っ」


ベッドに潜り込み、ぎゅうっと布団を握りしめた。


暁といたら......こんなにも、胸が苦しくなる。


きっと、夕くんなら、こんな気持ちにならない。


こんなことなら、最初から同居なんてするんじゃなかった......。


瞳から溢れた大粒の涙は、わたしの布団に大きな丸い染みを作った。