「...一緒なわけ、ないだろ」


涙を拭って見えた暁の表情は、とても苦しそうなものだった。


...え......?

どうして暁が、そんな顔するの......?


苦しいのは、わたしなのに...。


「...小さいときからいつもいつも、俺以外の男にばっかり目がいきやがって」


ため息まじりにそんな言葉を告げたと思えば。


「俺と離れて、他の男作ってんじゃねぇよ」


今度は力のこもった口調で吐き捨てた。


暁の真っ黒い瞳が真っ直ぐにわたしをとらえた。


その瞳は、いつもの余裕が見られなくて...切なそうに、揺れていた。


「陸上なんか、引っ越した先の高校でもどこでもできんだよ」


暁......なにを言っているの?


「俺がなんのために...わざわざこっちの高校選んだと思ってんだ」


...暁がおかしいよ。


空っぽの思考で、ひとつの考えが自然と浮かび上がった。


そんなの...そんなのまるで......。


「...これ以上泣きたくなかったら、今すぐ出てけ」


暁はわたしとは目を合わせずそう吐き捨てわたしの上からのくと、

イスに座りそのまま背を向けた。


わたしは震えてしまいそうな手のひらをぎゅっと握りしめて、起き上がり一度も振り返らず暁の部屋をあとにした。


ドッドッドッ......


鼓動が静かに強く速度をまして、

胸の奥が痛いくらいに締め付けられた。


その夜はなかなか寝つけず、

何時間経っても頭の整理がつかなかった。