「や、全然。

この祭りだって、俺がほとんど連れ回したようなものだし、電話なんて完全に」


そこで言葉が切れた。


次の言葉を待っても出ない。


「……どうしたの?」


「あ、いや。何でもない。」


「そう。

……私、ここから帰るから。

じゃあまた、新学期に。」


「送るよ。真っ暗で危ないから。」


「え、いいよ。1人で帰れるから。」


「じゃあ、これ持って帰りな。」


彼が私の手のひらに小さな光を落とした。


「……綺麗。」


ただの簡易蛍光ライトだったけれど、暗闇の中だとすごくいいものに思える。


「ありがとう」


「ん。気をつけて帰れよ。」


「うん。じゃあね。」


それでこの日は別れた。


この時、私はまだ自分の気持ちをよく分かっていなかった。


17歳の夏が終わろうとしていた。