「星野。」


「うん。」


自分でもびっくりするほど優しい声が出た。


「今日は本当に楽しかった。」


「そうだね。」


「……帰ろうか。もう遅い。」


そんなに時間が経っていたのか。


「うん。」


歩き出した雪村くんのあとを付いて行った。


本当に、今日は楽しかった。


もう高校生の間は経験できないと思っていたことが出来たから。


それに、この夏休み全体が楽しかった。


何日かに1回、交換した電話番号から電話がかかってきて、話もした。


それを私はいつの間にか楽しみに待つようになった。


あんなに拒絶していたのに、向き合ってしまった。


あの暗い世界に戻るのが苦しいくらい。