私も早く帰りたくて準備をしていると、目の前に上村さんが立った。
「星野さん、ちょっといい?」
また喉が締めあげられるような感じがする。
声が出なくなる。
そして、全ての音が遠くなる。
「昨日、聖と手を繋いでたでしょう?」
なんで知っているの。どこかで見ていたの?
「その反応は何?
もしかして、図星だった?」
伝わってくる空気でケラケラ笑っているのが分かる。
違う。手なんか繋いでいない。
ただ、電話番号を交換しただけなんだ。
出したいのに、声が出ない。
「あー、それ、俺のせい。」
「あ、聖!
聖は何も悪くないでしょ。」
彼女がいつもより高い甘い声で言った。


