「……髪の毛、本当に?」
ああ、事実を全部言ってしまいたい。
そう出来ればどんなに楽か。
ここで負けてはだめだ。
今までの私の積み上げてきたものがなくなってしまう。
「……染めて、ない……」
……今、私、なんて……。
自分の意思に反して言ってしまった。
……どうして。
でも、心は正直で少しだけすっと軽くなった。
「……良かったあ。だって俺、」
何か知っているの?
振り向くと、一瞬焦った顔だったけれど、いつもの顔に戻っていた。
「何となく俺、星野の髪の毛は地毛なんだろうなって思っていたんだよ。」
……ずっと分かってくれていたの?
それが私のネジを外したらしい。
「ありがとう。」
今日の私は変だ。
いつもなら言うはずのない言葉も、今日はすらすら出てくる。
恥ずかしくなって、手を振りほどいて短くじゃあ、と言って昇降口を出た。


