急に重力が戻った。
さっきまでの軽い空気も、天国まで飛んでいけそうな身軽さも、何もない。
重力に抗えなかった。
ドサッと地面に崩れ落ちた。
でも、呼吸は楽だ。
「はあっ、はあっ……、はっ、……げほっ……!……かはっ……」
……ここは、天国?
私、死んだの……?
そう考えた瞬間、ぐらりと世界が傾いていく気がした。
ふと地面を見ると、しっかり見覚えのあるコンクリートだった。
懐かしい、高校の屋上だ。
……天国じゃない。
生きている。
私は、生きている。
どうしようもなく、その事実に喜びを感じた。
死んでいない。
地に足をつけて、また歩いて行ける。


