ここからの景色は違った。
大きく息を吸うと、喉が乾燥してひゅっと鳴った。
ギャラリーが息を詰めているのが分かる。
そんなのはお構いなく、最後を楽しんだ。
ここから見える景色は、最初で最後だ。
校舎を横切る燕を見るのも、校舎を見るのも、この街を見るのも、風を感じるのも、空を見上げるのも、全てが最後だ。
あの定期テストも、朝ごはんも、昨日の夕飯も、1人きりの家も、友人関係も、雪村くんとの電話も、昨日が最後だった。
もう少し、後悔しないように過ごしておけば良かったかな、とも思ったけれど、そんなに悔いはない。
愛華と栞と遊園地に行くって約束を果たせなかったことだけが申し訳なかった。


