1箇所だけ、フェンスが低くなっているところがあり、そこを乗り越えて行こうと思った。
自分がこれから死ねると思うと、さっきまであれほど動かなかった体がしなやかに動いた。
「まじで?」
「頭イカレてんじゃないの?」
「おかしいでしょ」
「病んでるじゃん」
どんなことも言えばいいと思った。
事実を言ってくれれば言ってくれるほど、私の心は報われるような気がする。
罪を償っている心地になる。
フェンスにそっと手を掛けて、深呼吸をした。
……昂るな。もう、大丈夫。
片足ずつ、フェンスの外に出る。
下を見ると、足場は思っていたよりもあり、私の足より少し大きいくらいだった。


