どこに行くのかも告げずにどんどん歩いて行く。
待って、と言いたいのに、それすら言えない。
そんなこともさせないのが、上村さんだった。
その圧力があるから、上村さんは男子すらも余裕で押さえつけられるような権力を兼ね備えたのだ。
転びそうになるのを何度も踏ん張ってついて行った。
それに、腕が痛い。
伸びた爪が手首に喰い込んで痛い。
血が出るんじゃないかってくらいに強く掴まれていた。
何度も廊下を曲がって、階段を登って、ある階段の踊り場にたどり着いた。
足を止めた上村さんがこちらに振り返る。
「なんにも言わないんだねえ」
ふと、デジャヴを感じた。
どこかで同じことを経験していた気がする。
もういつだったか思い出せない。


