「では試験問題を配布するので、荷物を全て鞄の中にしまって下さい。」
深呼吸をひとつして、荷物をしまう。
私だけしか受験者のいない教室は、変な感じだ。
そして、誰も私がここで受けていることを知らない。
雪村くんでさえも。
先生達が生徒達と会わないようにいろいろ配慮してくれたお陰で、テストが受けられる。
机の上に置かれた現代文のテストを見る。
今回の評論文は、どこか心に訴えかけるものがあった。
……この人の言いたい事、今なら分かる。
ひたすら机のいびつな木目を見つめ続けていた。
は、と息を吐くと、先生の声が響いた。
「試験を始めてください」
重い静寂が身を包んだ。


