リマインダーの予定を修正すると、空になったグラスにジン・ライムを注ぐ…
既読を知らせる為、連絡事項を記した短文を送信したが、突然の約束に僕は少し戸惑っていた。
それは彼女との思い出が常に、雨の記憶と重なっていたからだ。
案の定、夜明け前の時報が銀色の時雨を誘うと電飾で着飾ったネオン街も無彩色に霞んでいった。

『このままだと次の約束も雨の中で終わるかもしれない』

不安を煽る何かが僕にそう囁きかけるが、何が項を奏するか分からない。
その様に信じれる所が、メンタルの不思議な一面だ──

「天気の急変は、君の気まぐれによる誘因かもね」

現実は明らかにそうではない。
だが、何かの囁きに対する僕のアンサーであった事は、にこやかに反論する彼女の笑顔が証明している…

海辺のラウンジには僕達の他にも数組のカップルが寛いでいた。
賑やかにじゃれ合う笑い声や料理を撮影するのに夢中の男女…思惑は様々だが僕の中で渦巻く秘め事と、彼らの趣旨である下心には決定的な違いがある。
その大きくかけ離れた内心を、勘のいい彼女は汲み取っていたのかもしれない…