アローン・アゲイン

急な遠征で友達の企画するイベントに参加出来なかった彼女を誘ったのは、カレンダーが新しくなった最初の週末だった。

『クリスマスをやり直さないか?』

イブから14日後の朝───
急な連絡にも関わらず二つ返事で身支度を整えた彼女を連れ向かった先は、マカロンの様なピンク色の三角屋根が湖畔のアイスリンクに映える期間限定の施設チェルシーノエル…だが前日までの大雪で県境を越える幹線道路が塞がれ通行止めとなり、仕方なく迂回先で見つけたラウンジへと目的地を変更した。
90分を越える待ち時間にも関わらず、この流れに気を良くしていた彼女に理由を尋ねると…

『カフェを営む友達が常連になる程、フレンチで有名な店よ…メディアにも頻繁に取り上げられ、知る人ぞ知る隠れた人気店なの』

だが、その和やかな空気が一転したのは店内へ入った直後の事だった…
係員の案内に従いカウンター前のコーナー席へ座ると、真横のテーブルに昔の恋人がいたのだ。
出来すぎた偶然だが、当然彼女とは気まずいムードに…
彼氏の登場で疑いは直ぐにも晴れたが、暫く口を閉ざしていた彼女はムードを壊した償いとして"互いを縛らないルール”を提案。
危うい雲行きを払拭したい僕には幾つかの選択肢があったが…"それで彼女の気が晴れるなら”という安易な考えを優先、その取り決めに快諾した───
実はその席が向かいのルーフ側だった事を聞かされるまで、僕は完全にその過去を忘れていた…

「私は源を担ぐタイプではないけどジンクスに関しては容認派なの。
てっきり私は…そうなのかなって」

ジェラシーではないにしろ、気に掛ける仕草に…

「あれが罪な偶然だとしても今日の事は明らかな誤解さ、君が教えなくても気付いた後で後悔してただろうね」

「スマートな性格だけに甘い感傷がデリカシーを欠乏させたのかなって…
でも貶める気なんて更々ないのよ!?互いに過ぎた事だし…」

一瞬、口をつぐんだが開き直った様に笑顔を向けた。

「僕はそこまで無神経じゃないよ…卑屈な上、軽率な性格ともなれば慎む以前の問題だからね」