「その言葉は今も…?」
軽く頷くと彼女は徐に天を仰ぎ、辛そうな笑顔で…
「『可能性とは究極の指標、だからこそ未来は決意で変わる』
気落ちしていた私にとってそれは、助言を越えた救いに聞こえたわ…追い求めた理想は萎み、散りゆくだけの夢を見ているだけだったから。
例えその灯火が希望の幻影であっても、すがりつくしかなかったの…盲目的にね」
「強気な君が付け入る隙を与えたんだ…
研ぎ澄まされた格言からポジティブな気構えだった事は容易に想像出来るけど、実際にはどうだった?」
「正に正攻法の鏡ね…筋道の立て方もそうだけど、奇をてらう事を凄く嫌っていたわ。
だから私との関係が進捗しない事への焦りを吐き出せずにいたのかも」
そう言ってうなだれたが、僕がそれを否定すると気を取り直したのか…
「解釈の相違があって然りだけど、貧弱だったのはむしろ私の判断力の方…当時は精神が病んでて、キャパシティが著しく劣っていたから。
だからかな…聞いた瞬間、明晰夢の様な不思議な感覚に囚われたわ」
痛切な苦境でさえ軽妙に回想する彼女は、揺れ動く心境の今昔についても滔々と切り込む…
「今になって思えば多くの事に気付かされた二年だったわ…自分を責めるくらい大切な恋もそうだったし、愛が終章を迎えれば素敵な思い出よりも悲しい過去として記憶に残るのも理解出来てた…この愛を滞らせたのは彼の軽薄さだけではないの」
だが差し迫った想いとは裏腹に、悲恋の定則を覆す憎悪の美化が彼女の狙いを隠しているかの様に見えるのは何故か…
とはいえ、彼の豪胆さが皮肉にも彼女を自身の解放へと突き動かした。
したたかなイメージの無い彼女を追い込んだ軽率さが功を奏したと見るべきだが、その功罪には更なる続きがあった。
軽く頷くと彼女は徐に天を仰ぎ、辛そうな笑顔で…
「『可能性とは究極の指標、だからこそ未来は決意で変わる』
気落ちしていた私にとってそれは、助言を越えた救いに聞こえたわ…追い求めた理想は萎み、散りゆくだけの夢を見ているだけだったから。
例えその灯火が希望の幻影であっても、すがりつくしかなかったの…盲目的にね」
「強気な君が付け入る隙を与えたんだ…
研ぎ澄まされた格言からポジティブな気構えだった事は容易に想像出来るけど、実際にはどうだった?」
「正に正攻法の鏡ね…筋道の立て方もそうだけど、奇をてらう事を凄く嫌っていたわ。
だから私との関係が進捗しない事への焦りを吐き出せずにいたのかも」
そう言ってうなだれたが、僕がそれを否定すると気を取り直したのか…
「解釈の相違があって然りだけど、貧弱だったのはむしろ私の判断力の方…当時は精神が病んでて、キャパシティが著しく劣っていたから。
だからかな…聞いた瞬間、明晰夢の様な不思議な感覚に囚われたわ」
痛切な苦境でさえ軽妙に回想する彼女は、揺れ動く心境の今昔についても滔々と切り込む…
「今になって思えば多くの事に気付かされた二年だったわ…自分を責めるくらい大切な恋もそうだったし、愛が終章を迎えれば素敵な思い出よりも悲しい過去として記憶に残るのも理解出来てた…この愛を滞らせたのは彼の軽薄さだけではないの」
だが差し迫った想いとは裏腹に、悲恋の定則を覆す憎悪の美化が彼女の狙いを隠しているかの様に見えるのは何故か…
とはいえ、彼の豪胆さが皮肉にも彼女を自身の解放へと突き動かした。
したたかなイメージの無い彼女を追い込んだ軽率さが功を奏したと見るべきだが、その功罪には更なる続きがあった。


