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あの後、悠季を送ったすぐ後に。
俺は繁華街へと繰り出した。
俺の居場所とは程遠い、下世話な奴らの集う街。
下品なネオンばかりの街、俺の目当てはすぐに見つかった。


「でよー!情けなくみゃあってなきやがるんだ」

「餓狼(がろう)だかなんだが知らねぇけど調子乗るからこんな目にあうんだよ」

「「あいつなんかに懐いた猫も可哀想に」」

ぴくりと耳が反応した。
可哀想??ヒナタが??

自慢げに話す2人に流石に引いた顔をしていた男達は俺を見つけると目を見開いて一気に青ざめる。

「お、おい!もうやめた方が」

「あ?まだまだあんだぜ?」

「そうそう、あの生意気な猫を蹴っ飛ばした時ーーー」

男の忠告も聞き入れず話す2人のうち1人を思い切り蹴っ飛ばす。
回し蹴りでも何でもない、ただ、背中を思い切り蹴っ飛ばした。

きゃーだか、ぎゃーだか。
気持ち悪い悲鳴がそこらに広がる。

『何が可哀想だって?』

倒れた男を何度も何度も蹴りつける。
後ずさり、逃げようとするもう一人の襟首を引っ張ってそいつも蹴る。

「やめ、やめて」

『あ?何が生意気だって?』

「やめてくだ...ぐっ」

『てめぇらは無力な生き物壊して喜ぶ気持ち悪いゲスだ。てめぇらなんかにそんな謂れをするほどアイツは堕ちちゃいない。』

ベトリと靴に血がつく。
気持ち悪さに思わず舌打ちをする。

「わる、かったよ、悪かったって!でも、たかが猫でこんな」

その言葉にぷちりと切れた。

“たかが”?

たかがだと?

『へぇ、じゃあ俺はたかがゴミ的存在に容赦しなくてすむわけだ。たかがだもんな?』

「「ひっ」」

男達の怯える顔に拳を振り上げて

「負けないでください」

振り下ろす。
ふぎゃ、だかぷぎゃだか情けない声を無視する。

「その欲求に負けないでください」

殺したかった、殺したいほど憎くて憎くて。
弱々しくなくヒナタと悠季の声がかぶった。

「みゃあ」

「こんなに貴方は優しくて、綺麗なのに……っ!」

ピタリとそこで拳が止まる。

血が、ポトリと地面に染み込む。
優しいわけない、こんなに抵抗もなく拳を震えるやつが。

「ひ、ぃ」

こんなにも怯えられるヤツが、綺麗なわけない。
なのに
なのに、悠季の顔が頭に浮かんだ。
情けなく泣きじゃくる悠季は、俺をそれでも綺麗といった、優しいのだと言った。

カタカタと震える情けない男2人その2人のうち1人の股間のそばにダンッと足を思いっきり落とす、男は気絶した、そのズボンは濡れていて漏らしたらしい。
それをふんと鼻で笑う、横で恐ろしげに見てたもう一人にもう金輪際俺に関わるな俺の前に顔を見せるなとすごめば何度も頷いた。

そんな男の手をぐしっと踏んでもう一度。

『約束、できるよなぁ?』


「っ、はい!はい!わかりました!だから!だからもうっ」


その声に、俺はその場を後にした。

頭の中で悠季が嬉しそうに俺の名前を呼んでるのが、浮かんだ。

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