餓狼は花を喰らう



動物病院につくとすぐにヒナタちゃんは治療代へ乗せられ、暫くして通された場所で彼はただ立ち尽くす。

少し俯いていて、その綺麗な金髪の隙間から涙が零れていて。
不意に、“危ない”と、思った。

彼の手をぎゅっと握って負けないでと言ったら彼は馬鹿にするように俺がそこらのやつに負けるかよと笑った。

違う、違うんです、違うんですよ主さん。

私が言いたかったのは、違うんです。

貴方は怖い人だから。
迷いなく相手を倒すでしょう。
その度にこんなにボロボロになってしまったヒナタちゃんを思い出して、恨みが憎しみが頭を占領して、殴り殺してしまうかもしれない。

私はその感情に、その殺意に負けないでと言ってるんです、と伝えると彼は何故と冷たいその瞳を私に向けた。
息が詰まる感覚に思わず吐き気がする。

でも、止めなくちゃ、だから。

止めないときっと彼は。

私は閉じてた口を恐る恐る開いた。


私たちにとって悪人でも
他の人にとってはいい人かもしれない。

私たちにとって殺したい相手でも
他の人にとって愛しい相手かもしれない。

ケジメは必要だと思う、実際ヒナタちゃんをこんな目に遭わせた奴らをぶん殴りたい気分だ。

でも、誰よりも悲しんでるのは主さんだから。


もし、主さんが殺してしまい、大切な何かを壊されかけたと伝えても、世間は殺したという事実だけで充分だと判断する。

殺しこそ悪で、それは許されないものだと。
確かにそうなのかもしれない、でも。

でも、そんな極悪人にするには、あまりにも、あまりにもこの人は。


優しくて、綺麗すぎる。