そして、失恋をする

「でも、千春とはずっと一緒にはいられなかったんだと思うぜ。例え足を滑らせて不慮な事故がなかったとしても、千春はもうこの世にはいない。だから、お前が引きずることはないと思うぜ」

「………」

僕をなぐさめる修也のこのセリフも、何回聞いただろうと、心の中で思った。

僕をなぐさめてくれていることには感謝しているが、そんなことが言えるのは修也が千春と恋愛関係ではなかったからだ。千春と修也は、友人関係だった。もちろん千春が亡くなったときは修也も悲しんでいたが、僕以上に引きずってはいない。

心の中で、僕の暗い感情が込み上がる。

「たしかにそうだけどさぁ………」

僕は一週間しか生きれなかった千春の残り少ない余命を思い出して、かすれた声で呟いた。

ーーーーーーたしかに修也の言うとおり、足を滑らせて事故がなくても、千春とは別れていたかも知れない。でも、あのとき自分の想いを伝えて、千春の不慮な事故がなかったらこんなに僕は彼女のことを引きずることはなかったと思う。

あのとき言えなかった告白が、今となっても僕の心を苦しめる。