そして、失恋をする

「おい、だいじょうぶか?」

そう言って僕は、女性に視線を向けた。視線を向けた先に、うつむいている女性の姿が僕の瞳に映った。

「急いでいたのかもしれないけど、信号は赤だったじゃないか。よく見ろよな」

「………」

僕のことを無視しているのか、女性からの返事はなかった。

ーーーーーー無視するのは構わないが、お礼のひとつぐらい言ってほしい。命を助けたのだから。

僕は、女性を助けたことになんとなく後悔する自分がいた。

「はぁ 」

僕は、口から深いため息をこぼした。そして、女性に背を向けた。

「………助けたの?」

「へぇ?」

背後から小さな声がかすかに聞こえて、僕は二歩歩いたところで立ち止まった。

「君が、助けたの?」

「そうだけど」

やっとお礼を言うようになってくれるかと思い、僕は目の前の彼女を助けてよかったと思った。