そして、失恋をする

「あった」

そう思いながら探していると、夏休みの宿題が見つかった。

勉強机の上に置いてある置き時計に視線を向けると、午後十六時三十五分だった。

今から家を出てバスと電車を乗り継いで行くと、学校までは一時間くらいはかかる。何時までに職員室までに持って来いと言われてないが、バスと電車ならギリギリ間に合わないかもしれない。

「お母さん。悪いけど、車で学校まで僕を送ってくれないか?帰りは、自分で帰ってくるから」

慌てているせいか、僕は早口で母親に頼んだ。

「嫌よ。今から私は、夕飯の準備をしないといけないのだから」

母親は、冷たく断った。

「それに、陸が忘れたんでしょ。陸が忘れたんだから、自分で学校まで届けなさい。陸も、もう十七歳なんだから、バイクの免許も取れる年齢でしょ。人をあてにしないで、バイクの免許を取って自分で運転して学校まで届けなさい」

「もういいよ!」

はっきりとした口調で母親に断られて、僕は夏休みの宿題をカバンの中に入れて家を出た。

ーーーーーー車で僕のことを送ることができないのなら、それだけを言えばいいじゃないか。わざわざ、僕にバイクを乗るように促す必要なんてないじゃないか。

忙しくて母親が車で送れない気持ちはわかるが、僕にバイクを乗るように言うのはやめてほしかった。僕の好きだった千春が、バイクに轢かれてから乗りたくなかった。