そして、失恋をする



「ただいま」

そう言って僕は、家の玄関の扉を右手で開けた。

学校を十五時二十五分に出て、家に着いたのは十六時十分だった。

僕は東山区にある、一軒家に住んでいる。東山区にある京都で有名な清水寺には毎年多くの観光客が訪れる。今の夏の季節ではあまり人は訪れることはないが、秋になると、ライトアップされた美しい夜景を清水寺から拝観することが観光客の思い出のひとつとなっている。

「おかえり」

僕の声が聞こえたのか、母親が玄関まで出迎えてくれた。

「私も今、仕事から帰ってきたところなの」

母親は、明るい声で僕に言った。

母親は週四日の午前八時三十分から、午後十五時三十分までのパートで働いている。正社員の父親と違って家に帰宅する時間は早いが、これから家の用事もしないといけない。パートの仕事だけではなく、家の用事も毎日してくれている母親には心の中で感謝している。